「遮熱材ってどんな種類がある?」
「遮熱材を設置するとどんな効果が期待できるの?」
夏場の工場内は非常に暑くなりやすく、遮熱材の導入を検討されている企業は多いものです。
しかし遮熱材には多様な種類があったり断熱材との違いが不明確だったりすると、製品選びに困惑してしまうこともあるでしょう。
本記事では遮熱材の役割・効果や種類、断熱材との違いなどを具体的に解説します。
工場内を夏場も冬場も快適に過ごせる環境にしたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
遮熱材とは下記に挙げる3種類の熱のうち、輻射熱を反射する材料のことです。
・伝導熱:物理的接触により伝わる(例:湯たんぽ)
・対流熱:気体や液体を介して伝わる(例:エアコン)
・輻射熱:赤外線によって伝わる(例:電気ストーブ)
日射は輻射熱の一つなので、夏場の工場内を快適な室温に近づけるには遮熱材が適しています。
遮熱材の種類には下記の2つがあります。
・遮熱シート
・遮熱塗料
上記は使用する箇所や目的が異なり、適切な遮熱材を選ぶためにはそれぞれの特性をしっかり理解しておくことが大切です。
以下では遮熱シートと遮熱塗料の特徴を、具体的に紹介していきます。
遮熱シートはアルミを主原料とし、一般的に屋根や外壁の内部に組み込まれて使用される素材です。
一般的にアルミの純度が高いと遮熱の効果も高くなるため、製品選びには純度の指数を判断基準にできます。
また遮熱シートは雨や風、紫外線などに直接晒されないので、比較的長持ちしやすい点も特徴です。
遮熱塗料は外壁や屋根などに塗布する素材で、太陽光などの輻射熱を効率的に反射します。
主に建物の表面に適用されるので紫外線や雨風の影響を受けやすく、遮熱シートよりも劣化速度は早めです。
数年程度で性能が下がる傾向にあり、効果を維持するには定期的に塗り直す必要があります。
また塗料にホコリなどの異物が付着すると日射の吸収率が上がり、効果が低くなってしまうのも特徴です。
遮熱材は輻射熱を反射させ熱伝導を防ぎますが、断熱材は伝導熱・対流熱の伝わりを遅くするものです。
断熱材は遮熱材よりも分厚く、空気層を多く含むことで熱伝導を緩やかにする機能があります。
材料自体が高温になるかどうか、といった点においても異なります。
遮熱材は熱を跳ね返すため温度に大きな変化がありませんが、断熱材は熱が留まるため高温になりがちです。
断熱材自体が高温になると室内に向けて熱が放たれ、夏場の暑さが防ぎにくくなることがあります。
遮熱材の設置は、快適な室温を維持するのに大いに役立ちます。
たとえば遮熱シート「サーモバリア」を使用した調べでは、製品を工場の屋根に設置したところ室温が11度下がりました。
また通常は日射により60度まで上昇する屋根材が、シートの設置箇所では23度程度でした。
さらにサーモバリアを屋根に設置することで、光熱費が3分の1程度にまで削減できたという事例もあります。
良質な遮熱材の使用は、夏場の蒸し暑さを防ぐだけでなく省エネにも有効です。
作業員の熱中症や脱水症などを防ぐためにも、遮熱シートで工場内全体を快適に過ごせるよう配慮する試みは必要といえます。
サーモバリアは99%以上と高純度なアルミ箔を主原料に用いた遮熱シートで、熱の反射性に優れています。
一口にサーモバリアといっても下記に挙げる種類があるため、製品選びに迷うことはあるでしょう。
・サーモバリアW
・サーモバリアS
・サーモバリアスリム
・サーモバリアエアー
・サーモバリアトップ
・サーモバリアフィット
下記では、種類ごとに異なるサーモバリアの特徴を紹介していきます。
サーモバリアWは両面のアルミニウムとエアーキャップを含む複数のポリエチレンから成る遮熱シートです。
9層構造を採用しており厚みが8ミリ程度あるのが特徴です。
また両面がアルミ箔のため、外からの輻射熱を跳ね返すだけでなく室内の輻射熱を留めておくことが可能です。
冬場の寒さが気になるところに設置すれば効率的に暖房の効きもよくできるため、サーモバリアWは高性能な遮熱シートといえます。
サーモバリアSもWと同様、両面のアルミニウムとエアーキャップを含む複数のポリエチレンから成る遮熱シートです。
Wよりも2層薄い7層構造を採用しており、室内への熱反射も期待できます。
厚みはWの半分の4ミリ程度で、さまざまな箇所に設置しやすいのが特徴です。
性能面ではWにやや劣りますが、オールマイティーに取り扱えるので利便性の高い遮熱シートといえます。
サーモバリアスリムは両面のアルミニウム・中層のポリエチレンの3層から成り、厚さが0.2ミリの遮熱シートです。
エアーキャップが含まれておらず極薄ですが、樹脂でできたシートの両面にアルミ加工が施されており強度は高く保たれています。
また、防湿・気密のために設置されるフィルム「ベーパーバリア」と兼用して利用できる点もメリットです。
サーモバリアエアーはスリムと同様、3層構造で厚さ0.2ミリの遮熱シートです。
特徴的なのは無数の微細孔がある点です。
微細孔は通気性をよくするためのもので、適切に湿度の上昇を抑えられるので結露を効率的に防げます。
屋根裏などに湿気が溜まりやすい場合、おすすめの遮熱シートです。
アルミニウム・ポリエチレン・不織布の3層から成るサーモバリアトップは、厚さ0.2ミリの遮熱シートです。
平坦な屋根の表面に直接設置するタイプで、専用の接着剤を屋根材に塗り本製品を転がすように広げて貼っていきます。
工場の他にも体育館や事務所、学校などのフラットな屋根への活用事例があり、日射による室温の上昇を防ぐことが可能です。
サーモバリアフィットは両面にアルミ、中層にガラスクロス繊維と樹脂でできたシートを採用する遮熱シートです。
縫製やハトメによりシート同士を繋ぎ合わせて使えるのが特徴で、主に乾燥炉などの機械への設置に適しています。
柔軟にサイズを調整できるので大型の機械なども丸ごと包み込め、機械熱による高熱を大幅に削減可能です。
また開閉できるカーテンに本製品を採用すれば、冬場だけ使用することで機械熱を暖房代わりに利用できます。
遮熱材の利用について、よく挙がる疑問を紹介します。
遮熱材の導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
遮熱材はホームセンターで購入できますが、さまざまな種類があり建物の特性や用途によって最適な製品が異なります。
特に工場の遮熱を目的とする場合、安価な製品を選ぶと施工しても十分に効果が発揮されない可能性が高いでしょう。
せっかく高品質な遮熱材を購入しても、正確な設置ができなければ性能が大幅に下がる可能性もあります。
素人の設置には、下記に挙げるリスクがつきものです。
・落下や転倒による怪我
・屋根の破損
・工具の落下による第三者への被害
第三者への損害には賠償責任が生じるケースがあるため、遮熱材の設置は専門業者に依頼することをおすすめします。
遮熱材と断熱材には異なる特性があり、熱を防ぐのが目的であれば遮熱材の使用がおすすめです。
ただし遮熱材が防げるのは輻射熱のみで、伝導熱や対流熱を反射する機能がありません。
効果的に熱を防ぎたい場合、両者に作用する断熱材を遮熱材と併用する必要があります。
遮熱材には遮熱シートと遮熱塗料の2種類があり、熱反射の効果や耐久性に優れているのは遮熱シートです。
良質な遮熱材を選べば夏場の室温を10度以上も下げたり、光熱費を大幅に削減したりできます。
また遮熱材には冬場の室内を保温する機能もあり、断熱材も併用すればさらに快適に過ごしやすくなるでしょう。
工場の暑さや作業員の健康被害を本格的に対策したい場合、下記の記事もぜひ参考にしてください。